情緒支援の現状
IQが知的障害域にないADS・ADHD、またそれが疑われる子どもを持つ親御さんから相談されること。
就学はどうすればいいのかと。
- 情緒支援級がない(知的支援級しかない)
- 情緒支援級はあるが普通級と交流できる回数が制限される(子どもの状態とマッチしてない)
- 通級がない、あっても自校にはなく送迎が必要(仕事や下の子問題)、あっても指導回数が少ない
このあたりが保護者を悩ませることが多いよう。(すごくわかる)
2022年4月に文科省が教委に「支援学級在籍生徒が通常クラスで受ける授業を半分以下にするように」という通知を出したことがきっかけで<2>の問題が浮上。それまでは自治体によるものの、情緒支援級に在籍はしつつ通級的な(基本普通級で過ごし、スポット的に支援級で)指導を受けるというやり方が可能だったのだけどそれができなくなる。
本来の在り方として
- 知的支援級、情緒支援級の両方をすべての学校に設置
- 情緒障害の生徒の中には知的境界域、LD、二次障害等の理由で通常授業を受けるのが難しい子がいるので固定の情緒支援級を設置(決められた時間だけでなく、1日を支援級で過ごすことが可能な環境、カリキュラム、担任数)
- 通級教室をすべての学校に設置(通級指導を希望する生徒の必要な指導回数を確保できるだけの担当教諭数)
が望ましいと思うのだけど、すべて満たしている学校ってあるのかね。(私の知る限り近隣ではない)
長男の場合
長男は療育手帳は持っていたものの、就学に向けての発達検査で知能が知的障害域にないことがわかり(その後、療育手帳は非該当になり精神障害福祉手帳を取得)知的支援級に入級することはできず、とはいえ当時通学可能な範囲の小学校に情緒支援級は開設されておらず、普通級に在籍しながら近隣小学校に通級指導のため通うことになった。
「知能が知的障害域にない=授業に問題なくついていける」わけではない上に、情緒障害ならではのトラブルは起こすわけで小学校低学年は学習のフォローにトラブル対応といろいろ大変だった。通級指導は週に1回で、親が送迎する。指導は1時間目にしてもらっていたけど、自校に戻るころには2時間目もおわりかけ・・。これが仮に2時間目だと前後合わせて3時間の授業が欠けるわけでしょう?共働きだったり、乳幼児のいる家庭には親の送迎がそもそも難しい。「このシステムどうなんだ?」とずっと思っていた。
4年生になると自校に情緒支援級が開設。長男は普通級から情緒支援級に移籍し通級教室は卒業となった。情緒支援級に移っても指導は週1、他はすべて交流級(普通級)ですごしたので長男が支援級に在籍しているとは知らない子もいたぐらい。
情緒支援級のメリット
他校に通級していたころと比べ情緒支援級に在籍することで我が家が感じたメリットは以下。
- 教員の配置に協力できる
- 親に送迎の負担がない
- 交流級の担任と連携がとりやすいのでトラブルに対して迅速に対応してもらえる
- 交流級の担任と連携がとりやすいので的確な学習支援をしてもらえる
- 支援の実績が積める
<1>について、支援級なので生徒8人にたいして1人、担任として配置される。支援級在籍が9人となれば担任は2人になる。教員のブラックぶりがニュースになる昨今、特別支援にマンパワーを割ける先生の数は多いにこしたことはない・・・
<4>について、長男は算数の文章問題が苦手だったのだけど、これは算数がわからないわけではなくて言語系学習障害のケがある長男は問題文が理解できない。これを通常の支援級で個別指導してもらった。学習障害が治るわけではないのだけど、小学校の文章題はある程度パターンがあり、パターンを理解し記憶することが得意な長男には効果絶大だった。
<5>について、これは知的障害のない情緒障害、グレーゾーンなんて呼ばれる層には結構大切なことで、たとえば小学校生活はなんとかやれたとしても中学、その先、そして社会にでてから環境整備がうまくいかずに二次障害を発症してしまったりすることもある。その時に、診断他、「いままでに受けてきた支援」が実績となり福祉につながりやすくなる。というのも、本人の特性の強さや困り感は専門家が長期間トレスしなければ本来正確にはわからないもの。だけど社会にそのリソースはない。では何で判断するのかというと過去に受けてきた支援になりがち。すごく極端な例を出すと「まったく同じ困難を訴える二人が同時にいたとして、福祉の枠が1つしかない場合、幼いころから療育を受け支援級に在籍し放デイを利用し服薬もしていた人と普通級でギリギリなんとかやってきて疲れ果てた人ではどちらが福祉の枠をとれるかって前者」という現実。最初私はこれ先輩ママから教えてもらったのだけど、子どもが成長するにつれてほんとそうだなと実感している。
どう選択するか
で、タイトルの回収。
地域差、学校差があるので一概にはいえないけれど、まず知的支援級については知的障害がないので除外・・といいたいところだけど、実際境界域だったり、LDがあったりすると判断が難しい。というのも、境界域だと通常の授業についていくのは学年があがるほど難しくなり、LDを普通級の担任がフォローするのもこれまた難しい。無理に普通級にいれて「勉強大嫌い」に仕上げてしまうよりは支援級で個別指導に近い対応をしてもらったほうが吉と出るケースもある。境界域が年齢があがるに伴って相対的に判断されるIQが下がり知的障害として手帳が取得できることもあるので、中高学年になってから支援級に移るより本人の抵抗感が少なかったりもする。しかし、逆にどんどんIQがあがっていってしまうケースもあるから悩ましい。(長男はIQ60代から小学校在学中に+60程あがり検査するたびに上がり続けている。こうなると新規に支援を受けるのはよっぽどな二次障害がでてないと難しい)
支援学校は高機能の場合、選択肢になることは少なく「(常に死に向かってるような)常軌を逸した多動」「ほかの障害を合併している」ケースぐらいかな。
高機能の場合、情緒支援級が開設されていればまずそちらが第一候補になるのだろうけど、これまた「少しのフォローがあれば学習は問題ない」「学習面は全く問題ないがトラブルが多い」ようなタイプの子だと先述した「週に半分以上の授業を支援級で」というシステムがネックになる。そうなると通級を選択することになるのだけど、こちらはそもそも学校に通級が開設されていなかったり「(本人の困り感に対して極端に)指導回数が少ない」ことがあったりします。
学校の実態(支援級⇔普通級が容易か、特別支援への熱意、環境整備)と、本人の特性の程度と、将来に向けての実績づくりをよくよく調べ考えて、支援内容を学校と交渉していくしかないのだなぁと思う。(医師に意見書を書いてもらうと交渉しやすい)
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